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指導しても「はい」「すいません」としか言わない部下とのやりとりを変える、効果的な質問技法

今回は、部下を指導する場面や1on1などで管理職が今すぐ使えるコミュニケーションのテクニックを紹介します。

部下に行動を改善してもらいたいと思って指導をしても、そのたびに「はい」「わかりました」という言葉しか返ってこない。

それでも行動が変わらないので、「この前も言ったと思うんだけどさ…」と再び指摘をすると、「わかりました、すいません」とは言う。

それでも、部下の行動は変わらないし、今日も同じような指導をしている。

あなたはこんな問題で困っていませんでしょうか。

部下はあなたに不満そうな態度をとっているわけでもないし、指導を受けた時は素直に「わかりました」と言うし、その一方で行動は変わらないし…。

管理職として、とてもモヤモヤするしストレスに感じる問題であるでしょう。

今回のブログでは、そんな状況に陥り困っている管理職の方に向けて、不毛とも思えてしまうやりとりから卒業するための質問技法を紹介します。

まず、上司と部下のやりとりを紹介しますので、読んでみてください。

※ブログ執筆者 AIDERS 代表 山﨑正徳のプロフィールは こちら


「毎回同じやり取りの繰り返しで、何も変わらないよ…」

上司「5月の報告書がまだなんだけど、早く出してください」

部下「はい、すいません」

上司「いつ出せるの?月末までって言ったじゃない」

部下「明日までには何とかします。すいません」

上司「とにかく早く出してください。毎回言ってますよ」

部下「わかりました。すいません」

上司「どうしてやってくれないの?今特別忙しいわけじゃないよね」

部下「すいません、ちょっとバタバタしちゃって」

上司「本当に困るんだよ。ちゃんとやってよ」

部下「はい」

こうやって、「指摘して改善を促す」という指導が一般的ですよね。

ただ、毎回毎回同じことの繰り返しになるようであれば、上司としては困って当然です。

ちゃんと向き合ってもらえているようには感じられないでしょうから、「おれのことをバカにしているのか?」と不本意な思いも募ります。

ついつい口調もきつくなり、パワハラなんて言われてしまえば本末転倒です。

こういうケースでお勧めしたいのは、「これをやりなさい」と伝えて「はい」と言わせたり、「どうしてやらないの?」と責めて反省させるやり方よりも、本人にしっかりと具体的に考えてもらうための質問が効果的です。


「どうしたら行動を変えられると思いますか?」と問いかける。

上司「5月の報告書がまだなんですが」

部下「はい、すいません。明日には出します」

上司「先月も期日までに出せなかったですよね。加えて、職場として問題に思っているのは、期日までに出せないことについて事前に相談も報告もないことです。今回も私が声をかけるまで何も言ってくれていません」

部下「すいません。気をつけます」

上司「これをなんとか改善してほしいのです」

部下「はい。すいません」

上司「ちょっと考えてみてほしいんです。〇〇さんは、どうやったら期日までに報告書を出せますか?」

部下「え?」

上司「具体的に考えてみてください。どのような仕事の仕方にすれば、期日を守れますか?」

部下「うーん…。いつも所見を書くところに時間がかかかっちゃうんです。まとめるのが苦手なんで…」

上司「所見かー。まあ、確かに時間をとられる人はいますよね。その所見を期日までに書くには、どのようにしたら書けそうですか?」

部下「ついつい後回しにしてしまうんです。だから、例えば下旬になったら、必ず一日に15分は報告書を書く時間を作るとかですかね」

上司「できそうですか?」

部下「がんばればなんとか。でも、忙しいと難しいかもしれません。要領が悪いんです」

上司「遠慮なく話してほしいんですけど、期日までに仕上げるために、職場は○○さんにどのようなサポートが必要ですか?どんなサポートを受けられたら間に合わせられますか?もちろん、できることとできないことはありますけど」

部下「そうですね…。難しいでしょうけど、所見のところって、箇条書きとかではだめですか?文章がどうも苦手で」

上司「箇条書きなら間に合いそうですか?」

部下「それなら大丈夫だと思うんです。いつも文書を考えすぎちゃって」

上司「わかりました。とりあえず今月はそれでやってみましょう。いいですか?」

部下「はい。やってみます」

初めのやりとりと比べてみて、いかがでしょうか。

▶どうやったら期日までに報告書を出せると思いますか?

▶行動を改善するために、できることはありますか?

▶そのために、職場からどのようなサポートがあればよいでしょうか?


この質問は、「はい」か「いいえ」で答えられるものではないし、「すいません」と謝って終えることもできません。

本人が自分でよく考えて答える必要があますから、改善するための責任と行動が明確になります。

加えて、ただ一方的に指示をするやり方とは違い、部下の気持ちを尊重することになりますから、パワハラなどのトラブルを防ぐことにもつながります。

この事例のようにここまでスムーズにやりとりが進むことは珍しいかもしれませんが、毎回同じやりとりになっているという方は、ぜひ試してみてください。


回答は「具体的に」してもらうこと。

この質問を効果的に行うために、2つのポイントを挙げます。

まず初めに、「回答は具体的にしてもらう」ことが大切です。

「どうしたらできますか?」に対して「もっと余裕があれば」のような漠然とした回答ではなく、「所見が箇条書きなら」「30分残業させてもらえれば」など、具体的な行動を答えてもらうことです。

そうすることで本人が何をすべきか、そのために職場がどのようなサポートをするのかが明確になります。

※職場のサポートについては、あくまでも職場にできる範囲のサポートであることが大前提です。また、サポートを必ずしなければいけないというわけではありません。


決して感情的にならないこと。

次に、管理職が決して感情的にならず、穏やかなやりとりを行うことが大切です。

この質問の目的は、「本人に考えてもらうこと」であり、「こちらの望む回答を引き出すこと」ではありません。

「どうしたらいいと思う?」と上から目線でプレッシャーをかけてしまうと、部下に「怖い」「なんとかこの場を切り抜けなきゃ」と思われます。

そうなると部下はあなたが望むようなその場にふさわしい回答をするだけであり、課題を解決するための回答ではなくなります。

あくまでも対等な関係で、「ざっくばらんに腹を割って話そうよ」という雰囲気で、自由に考えてもらうことが理想です。

以上、2つのポイントに注意を払い、ぜひ実践してみてください。

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公認心理師・精神保健福祉士。精神科・EAP機関・カウンセリングルーム・学校などで、2万件以上の相談を受けてきたカウンセラー。講師としての経験も豊富で、企業や公的機関において15年以上に渡り、メンタルヘルス、ハラスメント、コミュニケーションなどをテーマに講演を行っている。
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