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「傍観ハラスメント」はなぜ起きるのか。ハラスメントが蔓延する機能不全組織の特徴を徹底解説。


Aさん

この2か月、色々ありました。今はだいぶ落ち着いたんですけど、大変でした。4月に異動してきた主任が、かなりアクの強い人で。感情の起伏がすごく激しくて。機嫌がよい時はニコニコしていて、明るいんです。でも、機嫌が悪いとすごく顔に出るんですよ。怖いんです。

私の隣に座っているんですけど、イライラしているのがすぐに伝わってきて。すぐに被害に遭いました。ミスをしたら、「これ、どうなってるの?」と聞かれて、説明したんですけどかなり不機嫌で怖くて。すごく冷たく突き放されて、その日は私から声をかけてもちゃんと目を見て話をしてくれないんです。私の他にも、新人の男性がけっこうきついことを言われていました。とにかく不機嫌で言い方がきついんです。

ちょうど課長とのワンオンワンがあったので、私はそのことを話しました。あまりにも怖くて苦しいと伝えました。そしたら課長が他のメンバーにヒアリングしてくれて、問題だと感じたらしくて、支店長と課長の二人で、主任に注意してくれたようです。

その主任は、それからだいぶ大人しくなりました。課長の話だと、前の支店では全然注意されることがなかったみたいなんです。だからあまり自覚がなかったみたいなんですよ。今はだいぶ落ち着いて仕事できています。上司がすぐに対応してくれたので、本当に嬉しかったです。

Bさん

適応障害で先月から休職しています。休職の原因は上司のパワハラです。その上司は、役員が半年前に外部から連れてきたやり手の女性です。とても言い方がきつい人で、毎回傷つくことを言われます。みんなが見ているチャットでも詰められることがあって、本当に辛くて辛くて。

仕事に行こうと思うだけで動悸が止まりませんでした。思いついたことをなんでもこっちに投げてきて、休日・時間外だろうがお構いなしにチャットが飛んでくるんですよ。返信が遅いとそのことも咎められるので、仕方なく休日もチャットを見て、対応が必要なら返信をしています。

妻からは「休みにそんなことするのおかしいよ」「上の人に相談しなよ」と言われてかなり心配されました。役員に相談してみたんですけど、全くダメでした。「まあ、一生懸命な人だから」と言われて、それで終わりです。人事も話は聞いてくれましたが、何もしてくれませんでした。

僕が休職して、僕の業務を引き継いだ人が同じように具合が悪くなっているみたいです。悲しいですよ。社長も役員も人事も、みんな見て見ぬふりです。


あの課長の下につく人はけっこう具合が悪くなってるから、本当に気をつけてね。確か2年前に休職した人もいたんだよね。だから、無理しないで、何かあったらすぐに相談してね。


係長

私は一度だけ、Tさんの問題を注意したことがあるんですよ。「そんな言い方をしたら相手は傷つくよ」って。Tさんは「そんなことありません!」といって私にすごく怒って反発しました。それで、手に負えないので課長に相談したんですけど、課長は対応したくないみたいで「まあ、うまくやってよ」で終わりです。それどころか、私への不満を訴えるTさんを慰めるような対応をしたんですよ。
それで、もう私はTさんにとってはただの悪者ですよ。私が注意したって課長がそんなだからもうバカらしくて、怖いし、私も何も言えません。


工場長

どの職場でも人間関係のトラブルくらいありますよ。そこは大人同士、うまくやってほしいですよね。工場長の私が入ってどうたら言うような話ではありませんよ。当事者同士、よく話し合って解決してほしいですね。大人なんですから。


マネージャー

みんなに嫌われたくない!必要とされたい!


課長

どの職場に行っても言い方がきつい人くらいいますよ。それくらい普通ですから。彼は確かに言い方がきついですけど、良いところもたくさんあるんですよ。みんなそこをもっと見て、うまくやってくれないと。私から見ると、みんなやや被害的なんですよね。


社長

彼の行為が問題なのはわかります。ただ、彼は2年前からうつ病で通院しているらしいんですよ。だから、ハラスメントだと注意してしまって、それでうつが悪化してしまうことはないですかね?そう考えると、あまり刺激をしない方が良いように思うんですよ。


看護師長

確かにあの言い方はないよね。でも、あれってパワハラとまでは言わないんじゃないかな…。明確にパワハラだと言えないものを注意できないよね。

看護師長

ハラスメントとまでは言えなくても、あの言い方は職場の風紀を乱すものなので、次からは慎んでください。あのような場面では感情的にならないで、穏やかな口調で伝えてください。


自分が休職するまで追い込まれたことには今でも納得がいきません。社長も役員も人事も、僕がだいぶやられているのを知ってましたから。相談しても話を聞くだけで何もしてくれませんでした。考えると腹が立ちますし、言いたいことはあります。でも、社長は「復職する時は○○さんの下にはつけないから」と言ってくれていますし。ここで何か言って揉めるよりは、復帰して異動させてもらって、早く元の生活に戻りたいなと思っています。

本音を言えば、課長に助けてほしかったです。先輩にもっと注意してほしかったんですけど、でも私にも悪いところがたくさんありましたし、私がもっと動ければこんなことにはならなかったと思うんですよ。だから仕方ないんですよね。

もう休職して一年か…。私をいじめた先輩は普通に働いていて、なんで私は休まないといけないの?そもそも課長は見て見ぬふりだったし、やっぱり許せない!


ちょっと強く言われたくらいで、ハラスメント??甘いんじゃないの?私たちだって、みんな耐えて乗りこえてここまできたんだよ。仕事していればこれくらい普通だからね。



LEVEL1:ハラスメント行為者に対する被害者の不満
被害を受ける社員の間で、ハラスメント行為者に対する不満が募る段階です。管理職は社員から被害の訴えを聞き、不満に耳を傾けることが増えてきます。この段階では、管理職は社員と比較的良い関係を築くことができています。
LEVEL2:しかるべき対応をしない管理職への不満や不信
被害が増え、なおかつ長期化してくると、社員の不満はハラスメント行為者だけでなく、対応をしない管理職にも向けられるようになります。

「いつも私の話を聞くだけで、結局なにもしない」
「一番の問題は、管理職がなにも対応しないことだ。だから私たちが辛い思いをしている」

管理職がこのような抗議を直接受けることは少なく、表面的には被害を受ける社員と良い関係を築くことができますが、管理職への不満や不信は日々募り、徐々に職場の雰囲気が悪くなっていきます。
LEVEL3:新たな問題行動を起こす社員の発生と管理職の否認
職場への不満を募らせる社員が増えていくことで、士気やモラルは低下していきます。

「私がパワハラを受けているのに職場はなにも助けてくれないんだから、だったら私だって好きにしよう」
「うちの職場は、どうせ大きな声で主張したもの勝ちだから」

このように、不満や怒りを募らせた社員や、好きにやっても何も注意を受けないことを学んだ社員が、新たにモンスター化していくことになります。こうして問題を起こす社員が増えていくと、管理職も問題を直視できなくなります。部下からパワハラ被害を訴えられても、パワハラだと認めると対応をしなければいけなくなりますから、問題を認めたくない心理が強く働きます。

「仕事をしていればこれくらい普通だよ」
「あの人も悪気があってやっているわけではないからね」

このように、問題を曖昧にする対応が定着し、ハラスメントなどのモラルの低い行動が職場に蔓延していきます。
LEVEL4:パワハラやいじめ、健康問題、退職、人手不足の慢性化
パワハラやいじめが慢性化した劣悪な労働環境が日常になり、それに伴い、うつ病などのメンタルヘルス問題で休職したり、疲弊して退職する人が増え、人手不足の状態が慢性化します。ここまでくると、職場は問題に対する否認がより強固になり、「人手不足の原因は退職する社員にある」として済ませるようになります。

「最近の若い人は心が弱い」「次はもっといい人がくればいいのに」

変わるのは職場ではなく社員だ、という意識が強くなり、一方で現場は職場への怒りや無力感でいっぱいになりますから、現場と経営陣・役職者の間での溝がより深くなります。

Information

日総研主催「モンスター職員対応セミナー」に登壇いたします。
・2025年6月28日(土)名古屋(日総研ビル)
・2025年8月2日(土)大阪(田村駒ビル)
・2025年10月28日(土)福岡(日総研研修室 第七岡部ビル)
詳細はこちら → https://www.nissoken.com/s/15282/index.html

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公認心理師・精神保健福祉士。精神科・EAP機関・カウンセリングルーム・学校などで、2万件以上の相談を受けてきたカウンセラー。講師としての経験も豊富で、企業や公的機関において15年以上に渡り、メンタルヘルス、ハラスメント、コミュニケーションなどをテーマに講演を行っている。
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