今回のブログでは、実際に寄せられた相談事例をもとに、メンタルヘルス問題を抱える社員への具体的な対応方法を解説していきます。
まず、部下の問題で困っている管理職の方のお悩みを紹介します。
※ブログ執筆者 AIDERS 代表 山﨑正徳のプロフィールは こちら
目次
声をかけても「大丈夫です」としか言わないんです…。
うちの職場に、長く精神科に通院している40代の社員がいます。
1年くらい休職して、復職してから5年くらい経ちましたが、仕事は本当に簡単なものばかりです。
正直、周りもそういうものだと思って割り切っていますし、特にトラブルもなかったので、なんとなくここまで来てしまいました。
でも、この3か月くらい様子がおかしいんですよ。
仕事中にボーっとしていて、ウトウト居眠りをすることが増えて。
これまで会議の時に寝ていることはありましたけど、それ以外の時に寝ることはなかったんです。
明らかに能率が落ちたし、本当に最近は「出社しているだけ」みたいな…。
心配なんで何回か声はかけましたよ。
体調は大丈夫なのかと聞くんですけど、「大丈夫ですから」と言うんです。
ちゃんと診察は受けているのか?薬が合わないんじゃないか?とか思うんで、そういうのも聞きました。
でも、「大丈夫ですから」「先生には話してますから」としか言わないんですよ。
元々そんなに話すタイプではないので、聞かれたこと以上のことは答えないというか、そんな人です。
だから、こちらもそれ以上踏み込めなくて。
困りました…。あんなに居眠りしていたら周りも異様に感じますし。
病気のことはこっちは素人なんで、「大丈夫」と言われるとどうにもできないですよね。
こういう場合は、どうしたら良いのでしょうか…。
管理職として、とても苦しく悩ましい問題ですね。
このケースの難しいところは、社員の方が「長く精神科に通院していて、メンタルヘルス問題を抱えている人」という枠で定着してしまっているところかなと感じます。
そのような問題がなく、普通に働いていた人が居眠りを始めたら、「大丈夫?体調でも悪いの?」と介入しやすいですよね。
そうではなくて、「精神疾患が悪くならないように、最低限のパフォーマンスを維持すればOK」と職場が許容してきたがゆえに、どこまで踏み込むべきなのかが分かりづらいですよね。
しかも、本人がそこまでコミュニケーションをとるタイプでなければ、腹を割って話せるような関係も築きづらいですから、混乱すると思います。
ここから対応方法を解説しますので、ぜひ読んでみてください。
「病気」を切り口にすると、介入が難しくなる。
今後のブログ記事でも同じようなことを何度も伝えていくことになりますが、社員のメンタルヘルス問題を扱う際に大切なのは、「パフォーマンスの問題」を切り口に考えて介入していくことです。
ありがちなのが、今回のケースのように「病気」を切り口に考えてしまうことです。(これを「疾病性を切り口にした対応」と言います)
「病気が悪化したのではないか」「薬が合っていないのではないか」
このように考えること自体は自然のことですが、これを切り口に本人に介入すると、「大丈夫ですから」「先生には話していますんで」などと曖昧な返答をされると二の足を踏んでしまうことが多々あります。
管理職の立場としては、「大丈夫というけど、実際そうは見えないよ」と反論したい思いの一方で、メンタルヘルスという目に見えない問題に対して「あんまり言うと悪くしてしまうのでは」と不安になってしまいますよね。
ポイントは、「病気」ではなく、「通常の業務を行う上で支障になっているパフォーマンスの問題」を切り口に介入することです。
「居眠り」と「能率の低下」について改善を求める。
職場として問題に感じていることは「仕事中の居眠り」と「能率の低下」です。
あくまでも改善を求めるのはこの2点になりますから、このパフォーマンスの問題を切り口に介入することが大切です。(これを「事例性を切り口にした対応」と言います)
本人にとって否定しようのない客観的事実に基づき、職場として改善してほしい問題を伝えましょう。
「この3か月間、仕事中に居眠りをしていることが増えて、とても心配に思っています」
「この一週間、毎日居眠りしている時間がありました。電話を受ける回数も明らかに減っているし、データ入力のペースも大幅に下がっていますよね」
「職場としてはこれらを改善してほしいと思うし、心配にも思っています。体調の方はどうですか?主治医の先生には相談していますか?」
このようなイメージです。
パフォーマンスの問題を切り口にすれば、職場が何に困っているのかが明確になります。
本人も「大丈夫ですから」とは言えませんから、介入がしやすくなりますよね。
職場から主治医に情報提供し、意見を仰ぐ。
このケースのようにすでに精神科に通院していて、業務負荷の軽減などの特別な配慮を継続しているにも関わらず、居眠りがありパフォーマンスも悪く、事実上「出社しているだけ」のような状態であれば、そもそも「就労が可能な状態なのかどうか」を判断する必要があります。
指摘してすぐに改善するレベルであれば良いのですが、そうでないならすぐに産業医面談を受けさせて判断を仰ぎましょう。
主治医との連携も大切です。
本人の同意を得て、産業医から主治医に手紙を書く、または管理職や人事担当者、産業保健スタッフが診察に同行するなどして主治医と情報を共有しましょう。
本人が産業医面談などに抵抗を示した場合は以下のブログ記事を参考に、経過観察期間を設けて対応をすることもひとつの方法です。
※関連記事:ラインケアって何をするの?部下のメンタル不調に気づき、介入するための「3つのステップ」
なお、職場と本人との間で問題の認識に温度差がなく、本人が自分で主治医に必要なことを確認できる場合は、職場と主治医の連携は必ずしも必要ではありません。
主治医の見解に基づき、職場としての対応を判断する。
主治医の見解や今後の治療の方針などを確認したら、職場としての方針を検討します。
例えば、主治医から「休職が必要」という見解が得られた場合、対応はシンプルですよね。
でも、「薬を変えて少し様子を見ましょう」とか「一時的に状態が悪いようなので、可能であればより業務負荷を軽減して様子をみてもらえますか?」というような話があった場合、職場もよく考えて判断しなければなりません。
というのも、居眠りのような問題を、「具合が悪いから」「主治医が様子を見るように言っているから」という理由でいつまでも許容することは、職場の秩序や従業員の士気を大きく低下させることになります。
加えて、ただでさえ軽微な業務しか任せていなかった人に対して更なる負荷軽減を行うことも同様で、周囲への影響をよく考える必要があります。
「うちの職場は病気の人が得をして、真面目に働いている方が損をする」などというイメージを持たれることは避けなければなりません。
つまり、このようなケースでは職場としての限界を明確に設定する必要があります。
「薬を変えて様子を見るという先生の方針はよくわかりました。職場もできるだけ協力したいと思います。ついては、1か月様子を見ます。ただし、その間に居眠りや能率の低下が改善されないようであれば、職場としても勤務を継続させるわけにはいきません。その時は休職して、治療に専念してください」
このように、職場として許容できる範囲を明確に設定し、それでもパフォーマンスの改善が見られない場合の対応を伝えておくことが大切です。
これは管理職ひとりで判断できることではないと思いますから、人事担当者や上司ともよく話し合い、職場としての方針を決めていきましょう。
以上、基本的な対応の流れを解説しました。
実際に対応をする際には、個別のケースにより事情がかなり異なるはずですから、戸惑う場面も少なくないと思います。
当方は無料のコンサルティングも行っておりますので、お気軽にご相談ください。
いつでもお待ちしております。
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