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言うことを聞かない部下に必要な対応は、「説得」ではなく「責任を負わせること」

今回のブログは、実際に寄せられた相談事例をもとに、社員の問題行動に対する具体的な対応方法を解説していきます。

まず、部下の問題で困っている管理職の方のお悩みを紹介します。

※ブログ執筆者 AIDERS 代表 山﨑正徳のプロフィールは こちら


何を言っても全く指示に従わなくて、本当に困っています。

言うことを聞かない部下への対応で毎日本当に困っています。

30代の女性なんですけど、自己主張が強くて、会社の方針が不満だとはっきりと反対意見を言うんです。

まあそれはいいんですけど、問題なのは「私は納得できません」と言って、やってほしい仕事を拒否するんです。

それでは困るので、話し合って、なんとかわかってもらおうと試みています。

でも、「納得できない」「現場のことをなにもわかってない」とか言って、最終的には怒ってしまって。

そんな感じでやるべきことをやらないので、当然周囲は負担が増えて困りますよね。

それでも、誰も彼女には何も言えないんです。

言うとすぐにムキになって食って掛かってくるので、面倒だし怖いしで、言えないんですよ。

私にもすぐに感情的になるので、そういう行為は慎むように伝えているんですが、でも全然わかってくれません。

どうしたらわかってくれるでしょうか?

正直、もう疲れてしまいました…。

とても苦しい、深刻な問題ですよね。

このように「何を言ってもわかってくれない人にどう対応したら良いのか?」というご相談はこれまで多く受けてきましたが、ご相談される方の多くがネットで色々と対応策を検索し、様々な試みをしてきています。

「仕事の目的を明確に説明する」「部下の言い分にじっくりと耳を傾けてみる」「コミュニケーションを増やす」

やってみたけれど、全てダメ。

思い切って、「何か私に至らないところがあれば言ってほしいんだよ」と部下に伝えたら、一方的に不満を並べ立てられてしまい、まったく話し合いにならないこともあった。

あなたも、同じように途方に暮れていませんか?

「もしかしたら発達障害かもしれないな」「あの人の行動は人格障害に当てはまるかも…」

何を言ってもダメだと、こういうふうに病気や障害のせいにして納得しようとする人も多いのですが、診断名をつけたところで何の解決にもなりません。

ここから、このような問題で困っている方に向けて、具体的な向き合い方と対応方法を解説していきます。

ぜひ読んでみてください。


「どうしてこれが成立するのか?」と考えてみる。

「言うことを聞かない部下」を変えたいと思うあなたに、まず初めに考えてほしい基本的な話をします。

その部下の問題行動はどれくらい続いていますか?

例えば、「かれこれもう2年近くになるな…」と言う場合、さらに考えてみましょう。

その部下は、どうしてそんな働き方を2年もの間、続けることができたのでしょうか?

なぜ、その部下は今日まで行動を改めずに勤務を継続できているのでしょうか。

ここに問題の本質があります。

「どうして彼女は行動を改めてくれないのかな…。もしかして発達障害とか?」のように、「部下の問題ありき」で考えてはいけません。

この問題行動を長期的に成立させているのは誰ですか?

自分たちにベクトルを向けて、じっくりと考えてみましょう。


「この問題で困っている人」=「最も困るべき人」になっているか?

さらに、もうひとつ質問します。

今、部下の問題行動で困っている人は誰ですか?

そして、この問題により最も困るべき人は誰でしょうか。

考えてみてください。

言うことをきかない部下の問題で困っているのは、管理職であるあなたや、周囲の社員ではないでしょうか。

でも、そもそもこの問題で困るべき人は誰なのでしょうか。

会社の業務命令に従わない時、本来困るべき人は誰でしょうか。

言うまでもなく、業務命令に従わないわけですから、その責任を負うべきは社員自身ではないでしょうか。

それなのに、当の本人は全く困っていないわけです。

あなたの会社では、なぜ言うことを聞かない社員が全く困らず、真面目に働いている他の人たちが困っているのですか?

「この問題で困っている人」が「困るべき人」になっていないところがポイントであり、問題行動を繰り返す当事者に、責任を負わせることのできない環境(職場)に大きな問題があるのです。

つまり、「部下を変えたいなら、まず変わるべきは職場であること」を肝に銘じてください。

※「この問題で困っている人」=「困るべき人」になっているか?を点検する方法については、以下のブログ記事で詳しく解説しています。
共依存を克服する方法③「イネイブリングを点検する5つの質問」


必要なのは「説得」ではなく「責任を負わせる」こと。

「どのような働きかけを行えば、部下はわかってくれるでしょうか?」

部下に一生懸命に働きかけて、コミュニケーションの取り方を工夫して、なんとか改心してもらおうと試みている管理職の方はとても多いですよね。

部下と真摯に向き合い対話を重ねることはとても大切なことです。

ただし、あなたが一生懸命に関わり説得を続けることで、逆に部下の依存を招いて問題行動を助長してしまう関係があることも知ってください。

例えば、DVを繰り返すパートナーに「お願いだから暴力はやめて!」と強く訴えているだけでは、行動がどんどんエスカレートしてしまうことがあります。

暴力を振るっても「やめて!」とお願いされるだけで責任を負わないわけですから、「彼女は僕のことを見捨てないでいてくれる」と思い、ついつい甘えてしまって問題が深刻になっていくパターンもあるわけです。

それよりも、「私はもう耐えられないから、あなたがカウンセリングを受けて改善のための取り組みをしないなら、すぐに出ていきます。私の気持ちは変わらないので、どうするかはあなたが決めてください」のように伝えて、本人がとった行動に責任を負わせる方が本人も問題を自覚しやすくなるのです。

つまり、「困るべき人が困る関係」を築く必要があります。

だからこそ、必要なのは「説得」ではなく、「責任を負わせる」ことです。

業務命令に従わない社員に対して、就業規則や評価制度に照らし合わせて、然るべき責任を負わせること。

これだけのことなのです。

補足すると、このような話をすると「部下を突き放すようで冷たくないですか?」と質問されることがありますが、それは間違いです。

いつまでも部下のわがままを許容して力を奪い、職場での孤立を招く方が冷たい対応とは言えないでしょうか。

相応の責任を負わせることは「一人の大人として扱う当然の行為」であり、部下の成長を願えばこその愛のある対応です。

※関連記事:モンスター社員への対処法をいくら調べてもうまくいかないのは、上司のあなたが「部下との関係を壊さずに相手を変える方法」を求めているから。


指示に従うかどうかは、部下自身に決めさせる。

部下にいくら指導をしても納得せずに行動を改めない場合、わかってもらおうと言葉を重ねるのではなく、指示に従うかどうかの判断を部下に委ねることが大切です。

以下、基本的な対応の流れです。

① 部下が納得しないなら、納得できない事実を確認する。

納得できないことはよくわかりました。

② その上で、指示に従うかどうかを本人に決めさせる。

それでは確認させてください。○○さんは職場の指示に従えないということでよろしいですか?

※脅しにならないように!

③ 「従えない」というなら、あとは「業務命令に従わない社員」に対しての職場の方針を考える。

わかりました。それでは少し考えさせてもらいますね。

当たり前のことですが、「指示に従わない」と言っている部下に対して職場が相応の責任をきちんと負わせることができなければ、問題行動がよりエスカレートしていくことになりますので、そこは覚悟してください。

先ほどのDVの話で例えれば「次に暴力を振るったら出ていきます」と宣言していながら、いざその場面が来ても出ていかないなら、相手からすれば「口だけだ」と捉えられてしまいますよね。

繰り返しますが、部下を変えたいなら職場が変わらなければなりません。

方針を明確にし、きちんと実行に移しましょう。

なお、「職場の方針に従えないことでよろしいですか?」と質問した時に、「従わないなんて言っていません!納得できないだけなんです!」のように、問題を曖昧にしようとする人もいるでしょう。

それでも、軸をぶらさずに対応しましょう。

「納得できないことはわかったけど、これは職場の指示なので従ってもらう必要があります。もし従えないなら、人事とも情報を共有して対応を検討することになります」

「こちらのスタンスは変わりませんから、どうするかよく考えてください。明日また話しましょうか」


ケースバイケースではありますが、基本はこのようなイメージでしっかりと伝えていきます。

※関連記事:共依存を克服する方法⑥「相手を納得させようとするコミュニケーションからの脱却」


大切なのは、「あなたと一緒に働きたい」という思いが伝わること。

このような対応方法を教えると「よし!これでもう負けないぞ!」「黙らせてやる!」と意気込む方が多いのですが、確認していただきたいことは、私はわがままな部下への対抗手段を教えているわけではありません。

お気持ちはよくわかりますが、目的は「部下に行動を改めてもらうこと」であり「部下から一本取ること」ではないですよね。

部下の人間性を尊重し、穏やかな態度で、伝えるべきことを伝えましょう。

そして、「あなたと一緒に働きたいんだ」という思いが伝わる関わり方を心がけましょう。


うまくいくことを願っております

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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公認心理師・精神保健福祉士。精神科・EAP機関・カウンセリングルーム・学校などで、2万件以上の相談を受けてきたカウンセラー。講師としての経験も豊富で、企業や公的機関において15年以上に渡り、メンタルヘルス、ハラスメント、コミュニケーションなどをテーマに講演を行っている。
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