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職場で自殺者が出たら、今すぐ読んでほしい職場の対応マニュアル

日本の自殺者数はここ数年減少傾向にありますが、依然として年間2万人を超える深刻な状況が続いています。

警察庁の統計によれば、

となっており、とくに若年層や女性の増加が注目されています。

※参考:自殺の統計(厚生労働省)

さらに、自殺未遂者は自殺者の10倍近く存在すると言われ、1人の自殺は周囲の5〜6人に深刻な心理的影響を与えるともされています。

つまり毎年100万人規模の人々が、自殺に関連する苦しみを抱えていることになるのです。

では、実際に職場で従業員が自殺をした場合、職場に、そして周囲の人にどのような影響を及ぼすでしょうか?

私はこれまで、自殺者が発生した職場から様々なご相談を受けてきておりますが、一言でいえば、多くの職場は大混乱に陥ります。

目撃者は深刻なトラウマを抱え、対応に奔走した責任者は燃え尽き、自殺という事実が引き金でスタッフ同士で犯人探しが始まり、健康問題、人間関係のトラブル、退職、ミス、事故などに発展していきます。

だからこそ、大切なことは一つ。

「万が一の事態に備え、正しい知識をつけておくこと」です。

このブログ記事は、主に以下に該当する方に向けて、職場で自殺者が出た場合の対応方法を説明します。

●職場で自殺者が出てしまい、何をどう対応したら良いのかわからずに今すぐ使えそうな情報を集めている責任者・担当者の方

●万が一の事態に備えて職場としての準備をしておきたいという方

必ずお役にたてる内容ですので、ぜひご一読ください。

Information

今すぐに専門のカウンセラーに相談したい方は、以下のページにお進みください。
惨事ストレスマネジメント

※ブログ執筆者 AIDERS 代表 山﨑正徳のプロフィールは こちら


突然の社員の自殺。職場はどうなる?

昨日まで普通に仕事をしていた同僚が、ある日突然自ら命を絶つ。
そんな突然の惨事に見舞われた職場では、どのような事態が起きるのでしょうか?

主なものをまとめます。


自殺者が出た職場の担当者から寄せられた相談事例

このような疑問に対して、これから10のカテゴリーに分けて対応を説明をしていきますね。


①「職場で自殺者」という大きなショックを経験した時に起きる心身の反応。

 … 恐怖、強い不安、落ち込み、イライラ、怒り、自分を強く責める、やる気が起きない、悲しみ、ハイテンション、など。

身体 … 動悸、吐き気、涙が止まらない、頭痛、胃痛、腹痛、眠れない、寝てもすぐに目が覚める、悪夢、強い緊張感、食欲がない、など。

行動 … ミス、電話に出ない、仕事を休む、人に会いたくない、話したくない、お酒をたくさん飲む、ずっとスマホをやっている、仕事や趣味に過剰にのめりこむ、喧嘩、口論、など。

亡くなる前日に、美味しいパン屋さんの話を笑顔でしていたんですよ。あの時、本当は私になにか相談したかったんじゃないのかなと思って、毎日自分を責めています。


②大切なのは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を防ぐこと。

前述の通り、急性ストレス反応は通常2~4週で症状が軽減し消失します。

ただ、この反応が1ヶ月経っても治らずに続く場合、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断される可能性が出てきます。PTSDは、いわゆる「トラウマ」です。

PTSDになると、いつまでも職場に対する恐怖が消えなかったり、不眠やフラッシュバックなどに悩まされます。健康問題が長期化すれば、ミスやトラブル、欠勤、休職、退職など、職場の生産性にとても大きな影響を及ぼします。

つまり、職場が今すぐに取り組むべきことは、大切な社員がPTSDという深い心の傷を負ってしまうことを防ぐことです。

そのためにも、職場が正しい知識のもと、ダメージを負った社員に適切な対応を行い回復をサポートすることです。

職場が適切な対応をとることで、社員の負担が軽減し、PTSDを防ぐことにつながります。


③担当者選びの注意点

自殺などの惨事が起きた際によくありがちなのが、自らも自殺現場を目撃しているなど、大きなショックを受けている管理職が、対応に奔走しているという例です。

急性ストレス反応で体調が悪く、フラッシュバックなどで苦しんでいる状況では、冷静で適切な対応は困難です。
多くの場合、対応を誤り、現場はより混乱します。

社員は職場への不信感を強め、そして管理職はより負担を強いられるという負のサイクルが出来上がります。

結果として、対応がうまくいかないだけでなく、管理職が燃え尽き出勤できなくなる。
こんな事例は少なくありません。

担当者は、できるだけダメージを受けていない方、冷静で適切な対処ができるコンディションの方、例えば現場から離れた人事総務担当などを選びましょう。


④社員への情報開示


⑤社員へのサポート

社員へのサポートとしてまず必要なことは、次の2点です。

①急性ストレス反応についての情報提供を行うこと。
②職場としていつでもサポートする準備があることを示すこと。


これをできるだけ早く行いましょう。

また、より大きなショックを受けていて、職場として注意して見守るべき社員を押さえておくことも重要です。

自殺を目撃した人や、日常的に関係が濃かった人、すでに強い反応が出ている人が主な対象です。

声をかけて体調を確認し、具合が悪ければ休ませる、負荷を軽減するなどの配慮が大切です。


⑥症状に個人差が出やすいのは、「7日~10日前後」

さらにもう一つ大切なポイントをあげると、急性ストレス反応の症状に個人差が出やすい10日前後あたりから、より注意深く見守り、声がけを行いましょう。

急性ストレス反応の症状で苦しんでいる社員が、「まだ辛いけど、当初よりはマシになってるな」と感じ始める時期。
それが、惨事発生から、およそ7日〜10日過ぎた辺りなのです。

言い方を変えれば、反応に個人差が出やすい時期ということです。
そのタイミングで改めて声がけをして体調の確認をしましょう。

そこで症状の軽減を少しずつ感じていればいいのですが、症状に変化がない、または悪化しているという社員は要注意です。

PTSDのリスクがあると捉え、改めて業務負荷の軽減や休みをとらせるなどのサポートを検討しましょう。

※参考までに、急性ストレス反応の理想の回復プロセスを以下にてご確認ください。


⑦自殺の話題をタブー視せず、安全に語り合える環境をつくる。

「今回の自殺のことって、できるだけ話題にしない方がいいんですよね?」

これは、惨事対応の際に担当者からよく頂く質問です。

結論からお伝えすると、自殺の話を変にタブー視して話題にできない環境はお勧めしません。

なぜなら、強いストレスにより生じた辛さや悲しみ、不安や恐怖といった負の感情は、仲間と共有することでより早く癒されるからです。

だからこそ、無理に話題をタブー視せず、安全に語り合える環境が理想です。


⑧1か月後の回復状況をヒアリングする。

説明した通り、急性ストレス反応の症状が1ヶ月経過しても改善していない場合、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断される可能性があります。

つまり、1カ月が経過するタイミングは、より注意して社員の状態を観察すべき時期なのです。
ここで、改めて一人一人に声をかけ、心身の状態を確認しましょう。

その時点で未だに状態が良くない社員がいれば、心療内科や精神科を受診させる、職場に産業医やカウンセラーがいれば面談を受けさせるなどの対応が必要になります。

ここで該当する社員にスムーズに診察やカウンセリングを受けてもらうためにも、これまで説明してきた通り、1ヶ月の間に職場が適切な対応をとることが大切です。

社員が職場に対する安心と信頼を感じること、そして急性ストレス反応とPTSDについての正しい知識をつけておくことで、対応がしやすくなります。


⑨黙祷など、故人を弔う時間を持つことの有効性。


⑩専門家を活用する。

職場の緊急事態をより最小限のダメージで乗り越えるためにも、惨事が起きたらすぐに専門家を頼り、具体的な助言を得ることが最も良いやり方です。

惨事対応の専門家からは、主に以下のようなサポートを受けることができます。

繰り返しますが、惨事が起きた際に速やかに専門家を頼ることで、職場が被るダメージを大幅に食い止めることができます。

また、社員の目に見える形で専門家が関わることは、社員にとって、職場に対する安心や信頼を得ることに繋がりやすくなるのです。

当方でも惨事対応の経験は豊富で、ご連絡頂ければ精一杯のサポートをさせていただきます。
惨事対応は待った無し。時間は刻々と過ぎていきます。

惨事ストレスマネジメントの詳細はこちらよりご確認ください。


Information

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公認心理師・精神保健福祉士。精神科・EAP機関・カウンセリングルーム・学校などで、2万件以上の相談を受けてきたカウンセラー。講師としての経験も豊富で、企業や公的機関において15年以上に渡り、メンタルヘルス、ハラスメント、コミュニケーションなどをテーマに講演を行っている。
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