今回は、問題行動を繰り返す社員と、問題行動に対する組織のスタンスとの関連性についての話をします。
私はいつも思うのですが、「モンスター社員は職場の鏡」です。
モンスター社員を理解することが職場を理解することにつながりますし、職場を理解することなくモンスター社員に対応しようとしても、それは表面的な対応で終わってしまうのです。
今日はそのことを簡潔に理解していただくための話をします。
まず、モンスター社員の被害を訴える女性の相談を紹介しますので、読んでみてください。
※ブログ執筆者 AIDERS 代表 山﨑正徳のプロフィールは こちら
目次
「会社に行くのが怖くて辛くて仕方がないです…」
会社に行くのが辛くて苦しくて、仕方ありません。
今朝は、着替えて家を出ようとしたら、すごく気持ち悪くなって、動悸がして、玄関に座り込んでしまいました。
「行きたくない!怖い!」とはっきり思って、でも午後に大事な会議があったので、午前は休みをもらって午後からなんとか出社しました。
課長にも話しているんですけど、原因は課の先輩なんです。すごく気分にムラがあって、機嫌が悪い日は話しかけるだけでムッとした顔をするんです。
私は要領がそんなに良くないから、優先順位がうまくつけられなかったり、自分ですぐに判断できなかったり、それで迷惑をかけてしまっているのはわかってます。それでもなんとかやれていたんです。
でも、先月私がひとつミスをしてその先輩に迷惑をかけてしまって、そこからすごく私への風当たりが強くて。
一時的なものだろうなと思ってたんですけど、それから許してもらえてないみたいで、一か月以上きつい態度をとるんです。
周りもそれをわかっていて、同僚も上司も私に気を遣ってくれます。幸い課長はとても優しくて、本当に助けられています。
今日も「無理しなくていいから、午前は休みなよ」と言ってくれました。
先輩に対しても「ひどいよね。あんな態度をとることないのにね。気にしなくていいから」と言ってくれていて、私の話を聞いてくれます。
課長がこれだけ優しくしてくれているのに、私はなかなか切り替えられなくて。
心が弱いんです。なんとか前向きになりたいんです。どうしたらいいでしょうか…。
モンスター社員やパワハラの問題で被害を受ける方の切実な話ですが、読んでみていかがでしょうか。
このような相談は、これまでに数え切れないほどに受けてきました。
今回、私がこの相談を皆様に紹介した理由は、被害者がどれだけ辛い思いをしているかということを伝えたかったわけではなく、この被害者の訴えに、「モンスター社員が問題行動を続けることができる組織の構造」が集約しているからです。
これはわかる人には当然の話に聞こえると思いますが、モンスター社員の問題行動と組織の対応は大きく関連しており、私はそれを3つに分類しています。
以下の図をご覧ください。
ここから説明していきますね。
モンスター社員に対する組織の対応のスタンスは、大きくわけると図の①~③の3パターンです。
① 問題行動をきちんと指摘し、本人が従わなければ処分をするなど具体的な対応をとる。
② 職場は問題を感じているが本人に行動改善を促さず、腫れ物に触れるような扱いを続ける。
③ 職場がモンスター社員の問題を一切認めない。見て見ぬ振りをする。
この三つの対応のどれを選択するかにより、問題行動の深刻さが変わってくるのです。
ひとつずつ見ていきます。
①問題行動をきちんと指摘し、本人が従わなければ処分をするなど具体的な対応をとる。
これは最も理想的な対応ですよね。
社員が問題行動を起こして職場の秩序を乱しているわけですから、当然のことではありますが、行動を改めることを明確に求めて指導をする。
そして、従わない場合は本人にその責任を負わせる。
そこで働く人にしてみれば、職場が安全な環境を守ってくれていることが目に見えてわかりますから、安心して働くことができますよね。
モンスター社員にとっては都合が悪い職場に見えるかもしれませんが、野放しにされて歯止めが効かなくなり職場で孤立するよりも、ちゃんと指導をしてもらえる方が良いに決まっています。
このような職場は、問題がわかれば早めに手を打ちますから、「モンスター社員」と呼ばれるほどまでに問題が深刻化しづらいのです。
当方によく相談をしてくださる某企業様は、まさにこの対応を実践しています。顧問弁護士なども活用して毎回きっちり対応をしている印象を受けます。
対応方法がわからない場合はあれこれ悩んで問題が深刻になる前に、すぐに相談をして助言を受け、行動に移す。
これだけのことなのですが、これをシンプルに実践できる職場はなかなか少ないですよね。
②職場は問題を感じているが本人に行動改善を促さず、腫れ物に触れるような扱いを続ける。
これが最も多くの職場で見られる対応です。
被害を訴える社員が続出するなど、問題が大きくなってきたら当事者を異動させてチーム編成を変えながら、なんとなくだましだましやっていきます。
失礼な言い方になりますが、ババ抜きのジョーカーのように毎年モンスター社員が所属や担当を転々とし、そこで新たな被害者が発生する職場も多いですよね。
このような職場ではモンスター社員の存在が日常として受け入れられ、職場全体が無力感に苛まれていきます。
そして、被害者は「みんな我慢しているんだから、これくらい耐えられないとダメ」と自責的になりやすく、怒りや不満を持つことに対して恥の意識を持つようになります。
加えて、この状況に陥っている職場の特徴は、「上司はいい人なんですよ」というワードが多くなります。
確かに上司はいい人なのですが、この場合、上司はモンスター社員に対しても「いい人」なので、しかるべき注意や指導をすることがほとんどありません。
モンスター社員と被害者の間でトラブルが生じても、「まあまあ、お互い大人なんだから」と仲裁に徹して、管理職にとっての穏便な対応に終始してしまいます。
こういう書き方をすると上司が悪いように聞こえてしまいますが、決してそういうわけではなく、上司もそのような対応をせざるを得ない職場環境も多いのです。
例えば、課長が問題を起こす社員に一生懸命に対応をしても、さらにその上の部長や役員と対応の足並みが揃わず、結局課長ひとりが悪者になってしまうケースもよくあります。
課長から指導を受けた社員が部長に泣きつき、そこで部長が甘やかしてしまうような対応をとってしまうと、その社員からしたら「課長はひどい!」となり、今度は課長が攻撃のターゲットになってしまいますよね。
真っ当な対応をしても誰も自分を守ってくれないわけですから、課長はついつい摩擦が生じることを恐れ、穏便な対応をしてしまうのです。
③職場がモンスター社員の問題を一切認めない。見て見ぬ振りをする。
職場の雰囲気が最も悪くなり、退職者が増えるのはこの対応です。
上司に被害を訴えても、「大げさだよね。あなたにも問題があるんじゃないの?」「どの職場に行ってもこういう人はいるよ。そんなんじゃやっていけないよ」と、突っぱねられてしまいます。
背景に、役職者がモンスター社員に対応したくないとので認めないという「否認の心理」や、管理職としての「役割の無理解」の問題がよく見られます。
役割の無理解について少し説明します。
パワハラなどの問題が日常的な職場では、そこで働く人は被害を受けても守ってもらった経験がないわけですから、自分が管理職になった時に「守る立場になった」ということがわからないのです。
だから、部下は助けてほしくて相談をしても、上司はそれが自分の仕事だと思っていないわけですから、話が噛み合うはずがありませんよね。
具体的な対応を望む被害者に対して、「もっと前向きに考えてはどう?」「ランチでも一緒に行ってコミュニケーションをとってさ」とか、見当はずれの助言をしてしまう上司。
被害者は強烈な無力感に苛まれると同時に、職場に対して強い不信感を持ちます。
モンスター社員とセットで管理職が嫌われてしまい、職場全体のモラルが低下し、退職者が増えやすくなります。
加えて、被害者の職場への強い不信と怒りにより、新たなモンスター社員が誕生することも珍しくありません。
「どうせ守ってもらえないし、好き勝手やっても許されるなら私もやりますから!」
こんなふうに、モンスター社員の被害者が新たにモンスター社員になるという負の連鎖のリスクも高くなります。
ここまで読んでいただき、どんなことを感じますか?
繰り返しますが、「モンスター社員は職場の鏡」です。
モンスター社員を理解することは職場の理解につながるし、職場を理解することが解決の糸口となるのです。
当然ですが、管理職がモンスター社員の問題と向き合うのは、強い痛みが伴います。
職場の問題を認めるのは辛いですし、できれば蓋をしておきたいですよね。
苦しいと思いますが、まずは職場の問題を認めること。そして、自分たちがどうありたいのかをよく考えること。
そこから始めてみてください。
今回はここまでです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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