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上から目線で職場を批判する中途採用の新人」を現場の戦力に変える指導方法

年度始めは、人事異動や新人の入社などにより、フレッシュな気持ちと、今後への期待や不安などが入り混じり、気持ちがザワザワと落ち着かない時期でもあると思います。

新人を採用した職場は、役職者や教育担当の方は、しばらくは教育に時間をとられる忙しい時期になるでしょう。

当然ですが、新人には早く仕事を覚えてもらい、戦力として現場に出てもらわなければなりません。

だからこそ指導者は一生懸命に関わるのですが、うまくいく場合もあれば、そうもいかずに指導者が疲弊してしまうケースも多々見られます。

今回は、そんな指導者が対応に困ってしまう、ちょっと困った新人の話と、その対応方法について解説したいと思います。

まず、私が実際に相談を受けた、看護現場の役職者の方のご相談を紹介します。


「新人なんだから、もっと謙虚にするものじゃないの?」

うちの訪問看護ステーションに、先月ようやく新しい人が入ってくれました。

訪問看護自体は経験がない人なんですけど、看護師としてはベテランさんで、人手不足だったからみんな喜んでいたんですよ。

でも、その人を教育するのが本当に大変なんです。

訪問看護が初めてだから、初めは謙虚に学んでほしいんですけど、学ぶどころか私たちのやり方にあれこれ口を出すんですよ。

まるで管理職のような上からの物言いで、みんな戸惑っちゃって。
まだ入って一ヶ月なのに、早速職場で浮いてしまいました。

私からは何度か声をかけて話をしています。
職場の批判のようなことを平気で言うので、そういうのはやめてほしいと伝えたんです。

そしたら、「でも、本当のことですよね?」「私は看護師として、患者さんのためを思って忠告しているだけですよ」と言うんです。

まあ、確かにうちの職場の問題は多々ありますよ。

だから、そう言われちゃうとこちらも何も言い返せなくて。本当に困りました。

すごくプロ意識の高い人だし、悪気はなさそうだから、なんとかうまく職場に溶け込めるようにしてあげたいんですけど、どうしたらいいものかわからなくて…。

人手不足の職場で期待して採用したベテランの新人が、蓋を開けてみたら、上から目線で公然と職場を批判し、瞬く間に「困った新人」になってしまう。

これは現場の役職者やスタッフにとっては本当に苦しく、受け入れがたいことだと思います。

本来は、すぐに業務を覚えて、即戦力としてみんなを助けてくれると思っていた。

それが、職場の秩序を脅かし、行動を改めてくれる様子もない。現場は楽になるどころか、新たに重い苦しみを抱え、混乱していきます。

役職者にとっては、まさに頭を抱えて途方に暮れるシチュエーションでしょう。

それでは、このような状況で役職者としてどのように対応していくべきでしょうか。

ここから解説していきますので、ぜひ最後まで読んでみてください。


対応を誤ると、「退職」か「問題社員」の二択になる。

このような新人にうまく対処できず、結局こじらせてしまう職場の「良くない対応」は大きく二つに分かれます。

①指導する側もムキになって言い返し、一ヶ月もしない内に指導者と新人の関係が壊れる。

②注意されるのが嫌そうだし、辞められると困るので、指導する側が恐れをなして何も言えなくなる。


なんとなく周りも「変わった新人」「あまり刺激しない方が良さそうな人」と感じ、本人への刺激を避ける対応をとり、結局何も改善されずに月日が経過していく。

①の場合、すぐに退職になるケースがとても多い印象があります。

②の場合は、その後も行動を改めずに職場に居続けるので、職場として悩みが絶えなくなります。

「人手不足なので辞められるよりはマシ」「怒らせると面倒だし、穏便に済まそう」といった判断で、大きな問題が起きない程度に、注意して見守りながら抱えていくのです。

このような対応をしている職場は本当に多いなと感じます。

しかし、実際はトラブルが日に日に増え、フォローや尻拭いに回るスタッフは疲弊していきます。

そして、現場のスタッフの不満は問題の新人にだけでなく、しかるべき指導をしない管理職にも向けられやすくなり、結局のところ問題が深刻化し、全員の負担が増えるのです。

つまり、このような新人に職場がうまく対処できなければ、待ち受けるのは「退職する」か「問題社員になる」かの二択になります。

きっとあなたの職場にも、「職場がうまく対応できずに退職してしまった人」または「指導をするタイミングを逸してしまい、今さら手のつけようのない人」がいるのではないでしょうか。

だからこそ、行動を改めてもらうなら「新人である今」を逃してはいけません。


経験豊富なベテランを採用する時に、最初に伝えておくべきこと。

経験豊富な看護師だからこそ、新人といえども職場のやり方や環境が気になり、あれこれ口を出したくなるという気持ちもわからなくはないですよね。

ただ、いくら経験豊富でも、転職自体が初めてで、自分が「新人としてどのように振る舞うべきか」がよくわからずに空回りしてしまう人が多いということも事実です。

その場合、「中途採用で入った新人」としての適切な振る舞いと、職場が期待していることを明確に伝えて協力を依頼することが大切です。

お勧めしたいのは、次のように伝えることです。(新人を山田さんとします)

「山田さんは経験豊富ですから、ぜひこれまでの経験を生かしてほしいし、私もたくさん教えてほしいです。ただ、まず初めにお願いしたいのは、新人としてうちのやり方をしっかりと覚えてもらい、早く職場に馴染んでもらうことです」

スタンスや考えの違いなどで戸惑うことはあるかもしれませんが、当面はうちのやり方でやってください。早く慣れて、みんなともよくコミュニケーションをとれるようになってもらうことを期待しています」

「山田さんなりのカラーを取り入れていくのは、まずうちのやり方を覚えて、ベースが出来上がってからです。期待しています!」


このように、職場が新人に期待していることは「これまでの経験を生かして職場を改革してもらうこと」ではなく、「仕事を早く覚えて職場に馴染んでもらうこと」であると、明確に伝えましょう。


「意見を伝える」と「批判する」の違いを理解する。

では、中途採用の新人が「ここの看護はおかしい!」などと職場を批判していた場合、どのように対応をすべきかについて、説明していきます。

当たり前のことではありますが、指導者は、新人のどのような行動が問題に当たるのかをきちんと理解しておく必要があります。

まず、中途採用の新人が職場のやり方に疑問を持つことは全くおかしなことではありません。

だから、「何か気づくことなどがあれば、それはいつでも教えてください」というスタンスで良いと思います。

ただし、「意見を伝える」ことと「批判をする」では全くの別物です。

職場への敬意を欠き、公然と職場の至らなさを指摘することは「批判」です。

これは職場の秩序を乱す服務の問題であり、新人のこうした行為は職場としては到底認められないことを指導者は強く意識して関わりましょう。


「問題のすり替え」に巻き込まれないこと

職場の批判をやめるように伝えた際、「でも本当のことですよね?」「ここの看護のやり方は遅れていますよ。危険だから言っているんですよ」などという反論を受けることはあり得るでしょう。

このように言われると、ついつい尻込みしてしまい、相手に負かされてしまいそうになります。

ただ、これは「問題のすり替え」に過ぎません。

職場が改めてほしい行為は「批判」であって、「意見を伝えること」ではありません。

「本当のことだから、職場の批判をしてもよい」という考えが間違っているのです。

だからこそ、次のように伝える必要があります。

「もちろん意見は言ってもらって構いませんが、批判は認めません。意見がある場合は、批判ではなく、役職者に対して安全な言葉を使って、意見として伝えてください」

「そしてその意見をどう扱うかは職場が決めることです。その結果がどうであれ、山田さんは秩序を乱すことなく、ご自分の業務をこなす必要があります」


指導は複数で行い、指導者を孤立させない。

指導が困難な新人への対応で最も大切なことは、指導者を孤立させないようにチームで対応をすることです。

例えば、主任クラスの指導者が言うべきことを言っても新人に響かない場合、更に上の役職者が面談して、同じことをしっかりと伝えて改善を求めなければなりません。

職場のまずい対応の典型例として多いのが、主任の指示に従わない新人に対して、更に上の役職者が何の注意もせずに新人の不満を傾聴して、優しく接してしまうということがあります。

家族で例えれば、姉が妹の素行の悪さを注意しても、親が妹を一切叱らずに「お姉ちゃんに色々言われて大変だったね」と優しくするなら、その妹は態度を改めますか?

おそらく姉のことを「口うるさいお姉ちゃん」と思って敬遠するだけではないでしょうか。
これと全く同じことが新人指導でも頻発します。

このように指導者側の足並みが揃わなければ、新人の行動は改善しないことに加え、指導担当者は疲弊して上司への不満を募らせ、職場環境が悪化します。

指導者側の足並みを揃えることは大前提として、職場としてのスタンスを明確に伝える場合は、権限を持つ役職者が行うことをお勧めします。

それだけでも、現場の指導者はより対応がしやすくなるのです。


大切なのは、「あなたと一緒にやっていきたい」という職場の思いが伝わること。

ここまで、指導が困難な新人への対応方法をお伝えしましたが、私がここまで説明した内容は、あくまでもテクニックです。

新人を教育するためにテクニックはもちろん大切ですが、それを生かすも殺すも、それは新人に対してこちらの思いがどれだけ伝わるかどうかだと思います。

「なんとかこの人を育てて、仲間として一緒に働きたい」
「あなたと一緒にやっていきたい」

この思いがあるからこそ、新人と正面から向き合って話し合えるのです。

相手の人間性を尊重して、誠意を持って伝えるから、新人も「私のことを思って言ってくれている」と思えるのです。

相手への尊重がなければ、面談がただのダメ出しの場になり、新人を傷つけるだけです。今回の内容は、相手への尊重があってこそ活かせる対応方法であることを最後に確認していただけると嬉しいです。

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公認心理師・精神保健福祉士。精神科・EAP機関・カウンセリングルーム・学校などで、2万件以上の相談を受けてきたカウンセラー。講師としての経験も豊富で、企業や公的機関において15年以上に渡り、メンタルヘルス、ハラスメント、コミュニケーションなどをテーマに講演を行っている。
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