カウンセリングで、うつ病で休職をしている方から「休職中の過ごし方がわからない」「みんなどうしているんですか?」などの相談をよく受けます。
休職をすることになっただけでもとても大変だというのは言うまでもありませんが、復職に向けた過ごし方がわからなければ、ただただ途方に暮れるしかありません。
ネットで調べてみても、休職した方の体験談などはあるものの、休職から復職までの過ごし方の詳細をきちんと説明している情報が少ないなと感じたので、私が書くことにしました。
ということで、この記事は「うつ病で休職をした人が、休職直後から復職後まで、より安全に復職をするための段階別の過ごし方」についてポイントをまとめています。
初めに、厚生労働省調査班の研究(参考:総合研究報告書の21ページに記載)では、うつ病になって休職した社員の約半数が、復帰後に再発し再休職しているそうです。
うつ病を再発して再休職した人の割合は、復帰から1年で全体の28.3%、2年で37.7%、5年以内で47.1%に達していたようで、およそ半数が復帰後5年以内に再発していることがわかります。
それだけ、うつ病からの復職を成功させることが容易ではないことがわかります。
これについて、これまで多くの休職者を支援してきたカウンセラーの立場から見解を述べると、これだけ再発しやすいのは、休職者も会社も「休職と復職についての正しい知識」を持たないことがひとつの原因なのではないかと感じます。
「休職したのになかなか良くならなくて、気持ちばかり焦って仕方がない」
「休職2回目なんですよ。前は2カ月で復職したんですけど、すぐに具合が悪くなって、だましだまし半年勤めて結局最後は会社に行けなくなりました」
「診断書の休職期間は1カ月なので、来月から戻らないといけないんですよ。だから、今から体力をつけようと思って運動しているんです。でも、すぐにクタクタになっちゃって…」
カウンセリングでお会いする休職者の方の多くは、私に会うまで「正しい過ごし方」を知りません。
あなたもそうではないですか?知っていますか?うつ病からの復職には、段階に応じた適切な過ごし方があることを。
あなたが抱えている休職と復職についての様々な疑問や不安は、誰もが同じように抱えているものであることを。
そして、あなたが正しい知識をつけることで、安全に復職できる可能性が大きく上がることを。
だからこそ、まずはこの記事を絶対に最後まで読んでください。
あなたの安全な復職を心から応援したい。
休職という耐え難い孤独と不安の真っただ中にいるあなたの支えになりたい。
その一心でこの記事を書きます。
※ブログ執筆者 AIDERS 代表 山﨑正徳のプロフィールは こちら
目次
うつ病とは。
「気分がずっと落ち込んでいる」「何もやる気がおきない」「眠れないし、仕事も集中できない」
誰にでも、精神的に辛い時や意欲が低下している時はあると思いますが、一日中ずっと気分が沈み込み、意欲や興味の喪失が2週間以上続くと、うつ病の可能性があります。
うつ病は、精神的ストレスや身体的ストレスが重なることなど、様々な理由から脳の機能障害が起きている状態です。
以下、主な症状を「心」と「体」に分けて説明します。
心の症状
- 気分が落ち込む。
- 何をしても楽しくない。
- やる気が起きない。
- イライラしやすい。
- 罪悪感・自責感
- 「死にたい」「いなくなりたい」と考える。
身体の症状
- 眠れない。寝てもすぐに目が覚める。眠りが浅い。
- 食欲がなく、体重が減少する。
- 疲労感、倦怠感が続く。
- 頭が重い。
- 便秘、下痢。
- 肩こり、身体の痛み。
これらの症状が続くことにより、欠勤、遅刻、ミス、集中力の低下、コミュニケーションの減少など、仕事にも様々な支障が及ぶようになります。
心身の不調を自覚しながらも無理を続け、結果的に会社に行けなくなるほどに状態が悪化し、上司や人事、産業医などに促されてようやく精神科や心療内科を受診し、そのまま休職になる。
こんな風に、「職場で問題が大きくなってからようやく治療を受ける人が多い」ことも、うつ病の特徴です。
休職中の人が悩んでいること。
▶ 今頃、みんなに悪く言われているに違いない。もうあの会社で自分の居場所なんてないし、辞めるしかないかな…。
▶ 私がやってた仕事、どうなってるかな。あんな状態で引き継ぎもできずに休んじゃって、きっとみんなに迷惑をかけているんだろうな…。
▶ 先生からは「今は何も考えずにゆっくり休んでください」と言われたんだけど、みんなどうしているの?体力つけるために運動とかした方がいいんじゃないのかな…。
▶ 元の部署に戻る自信がないんだけど、休職して迷惑をかけた上に「異動したい」なんて言うのはさすがに社会人としてまずいですよね?
▶ だいぶ良くなったと思って久々に友達と会ったら、次の日すっごく疲れて寝込んでしまいました。初めは一ヶ月で復職するつもりだったのに、三カ月経ってもこんな状態で。いつになったら復職できるんでしょうか…。
▶ 復職した時に、みんなにどんな反応をされるのか不安で不安で仕方がない…。もう前のように接してくれないんじゃないかな…。
復職できる状態とは?
安全に復職ができる状態の目安として、以下の5つの項目を参考にしてください。
- 気分の波が安定していること。
- 睡眠が安定していること。寝つきの悪さ、中途覚醒、早朝覚醒などの症状が見られない状態。
- 体力が安定していること。週5日、定時の時間内に活動できる体力がある。疲れを感じても、睡眠をとることで回復できる。
- 意欲が回復していること。仕事への義務感よりも、「今の生活にも飽きてきたな」「そろそろ仕事したいな」という自然な意欲。
- 休職に至った原因、自分自身の課題、再発を防ぐために注意すべきことなどを整理できていること。
この状態にできるだけ早く近づけるように、これから休職中の過ごし方を具体的に説明していきます。
休職に入る時に確認しておきたいこと
①傷病手当金の申請について
『傷病手当金』とは、ケガや病気で働けなくなった場合、加入している健康保険組合から給与の約 3 分の 2 を受給できる制度です。
申請して問題がなければ支給されますが、支給が開始されるまでにけっこう時間がかかるため、早めに申請することをお勧めします。
休職する際に会社の人事担当者などから説明を受ける方がほとんどですが、意外と職場から何も知らされずに過ごす方もいます。
収入面での一定の見通しを立てておくことは復職への焦りの軽減につながりますので、休職に入る際に確認しておきましょう。
②休職できる期間について
会社により、病気で休職できる期間は違います。あなたが休職可能な期間を早めに会社に確認しておきましょう。
③復職の際の手続きや会社のルール
「復職可能の診断書を会社に提出すればすぐに復職できる」と思っている方が多いのですが、実際は会社により復職の仕方は大きく異なります。
診断書を出せばあっさり復職できる会社もあれば、産業医面談や職場が定めた復職トレーニングなど、復職準備に一ヶ月以上を要する会社もあります。
復職をする際に必要な流れは事前に確認しておきましょう。
休職初期(療養期)の過ごし方
休職直後は、ほとんどの人が「休職したという事実」を受け入れられず、それに伴う強い罪悪感や不安、苦痛に悩まされます。
休職期間中に最も強い苦しみを味わうのは間違いなく休職初期です。
このような強い不安や苦痛は「復職への強い焦り」につながり、症状の悪化、休職の長期化の原因になります。
だからこそ、正しい知識を持ち、最も苦しい休職初期を乗り越えましょう。
休職初期の特徴
・ 仕事のことが頭から離れず、罪悪感が強くなる。「自分は逃げ出した」「きっとみんなに悪く思われている」などと自責的になり、復帰を焦る気持ちも強くなる。仕事は休みだが、とにかく落ち着かず、気持ちは全く休めていない状態に陥りやすい。
・ 体力をつけるために無理な運動をしたり、資格の勉強をはじめてしまったりと、体力を酷使するような行動をとりやすい。
・ 平日は気分が悪く、土日になると気持ちが休めることが多い。また、気分は天候にも左右される。
・ 「診断書の期間を終了すれば復職するもの」と思いやすく、回復していない状態で復職をするケースも多い。その場合、すぐに調子を崩し再休職となり、さらなる症状の悪化につながる。
過ごし方のポイント
・とにかくゆっくりのんびり休むことを心がける。「安心」「楽」「安全」「嬉しい」などのポジティブな感情が味わえるリラックスした生活をする。
・無理に運動や勉強をするなど、体力を酷使することをしない。
・医師の指示に従い、処方された薬はきちんと飲む。
・お酒やネット、ゲーム、買い物などへの依存に気をつける。
・規則正しい生活を心がける。
・職場との連絡は「休職に関する事務連絡のみ」に徹底すること。メールをチェックしたり、担当していた業務のことでいつまでも電話対応を行うなど、業務に関わることはしない。
・診断書に書かれた休職期間は、あくまでも経過を見る期間であり「その期間が過ぎたら復職をする」ということではない。「来月から復職だ」などと決めつけないこと。
・焦りや不安、罪悪感などを一人で抱えない。主治医、カウンセラー、家族などと共有する。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
うつ病で休職をすることになったあなたにまず伝えたい「休職初期の過ごし方」
休職中期(回復期)の過ごし方
休職初期の強い罪悪感や苦痛から解放され、休職の生活自体に慣れてくる時期です。
のんびりとした生活ができるため症状も改善に向かい、回復を実感できるようになります。
休職中期(回復期)の特徴
・ 休職に慣れてきて、のんびり過ごせる時間が多くなる時期。
・ 外出したり、本を読んだりといった行動が少しずつできるようになり、回復を実感することも多くなる。一方で、外出した翌日にぐったりと疲れてしまうなど、まだまだ調子に波のある時期。「昨日は元気だったのに…。いつになったら良くなるんだろう」と不安になるなど、体調に一喜一憂しやすい時期でもある。
・ 仲の良い同僚と会うこともできるようになるが、そこで「元気そうだね」などと言われることで、「みんな私のことをさぼっていると思っていないかな?」と不安な気持ちになることもある。
過ごし方のポイント
・ 「焦らず、辛抱の時」と捉え、その日の体調次第で動くのではなく、計画的に行動する。体調の波に一喜一憂しない。
・ 「友達に会ってみようかな」など、チャレンジしたい気持ちがある一方で不安感も持ち合わせる。この時期は、「チャレンジよりも自然な意欲」を大事に、無理な行動は慎む。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
うつ病の休職中期(回復期)の過ごし方
休職後期(リハビリ期)の過ごし方
状態が安定し、仕事をしていない現状では概ね支障なく生活できる時期で、通勤訓練や会社との話し合いなど、復職に向けた準備を進めていきます。
休職後期(リハビリ期)の特徴
・気分、体力、睡眠、意欲などの状態が安定し、仕事をしていない現状では特別の支障がなく生活できる時期。
・「仕事をしなければならない」という義務感よりも、「つまらないからそろそろ働きたいな~」という意欲が強くなってくる。
・休職初期の罪悪感を客観的に振り返って見ることができるようになる。「あの時は自分のことを心が弱いと思っていたけど、今振り返ると病気だったんだな…」と思える。
・復職に向けた会社との話し合いや、復職トレーニング(復職デイケアへの参加や通勤訓練など)を開始する時期。
・復職が具体的になってくることで、不安感も強くなる。復帰した時のことを考えて不安になったり、会社とのやりとりが思うようにいかず、調子を崩したりすることもある。
過ごし方のポイント
・「復職をすること」よりも、「再発をしないこと」を意識してトレーニングする。
・通勤訓練で想定外に疲れたり、会社とのやり取りが思うようにいかないことは珍しいことではない。「体力の課題がわかって良かった」「思うように進まないと自分はイライラしやすいんだな」など、それらの出来事を前向きに受け止めて準備していく。
・復職後の業務内容などについて、具体的に確認をすることが大切。不安なことは積極的に確認するようにし、心配に思うことなどがあれば上司や人事に伝えておく。
・会社に時短勤務などの制度がある場合には、できるだけ活用する。時短勤務をすることに対する職場への引け目は誰もが持ちやすいが、会社は「時短勤務をしてもらった方が安心」と考えている。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
うつ病の休職後期(リハビリ期)の過ごし方
復職後に注意すべきこと。
状態復職後、うつ病の再発を防ぎ就労を継続するために注意すべきポイントをまとめます。
・通院、服薬は医師の指示に従うこと。絶対に自己判断で中断しない。
・時短勤務や残業制限など、会社で決められた就業制限は必ず守る。
・土日は通院などの最低限の活動にとどめ、できるだけゆっくりと休養する。
・上司や人事、産業医などには自分の体調をきちんと報告し、困ったことがあればすぐに相談する。
・周りを安心させようとして、無理に元気に振る舞ったり、負荷のかかる仕事を引き受けたりしない。
・風邪や発熱、体調不良などは疲労のサイン。「うつ病とは関係ない」で済まさず、医師や上司などに報告すること。
・飲み会は不調のきっかけになりやすいので当面控える。
休職・復職Q&A
Q1:休職中に旅行に行っても大丈夫ですか?
旅行に行けるほどに十分に体力が回復しており、主治医の了承を得て、リハビリの一環として行く旅行であれば問題はありません。
その場合は、無理な計画はたてず、旅行中も規則正しい生活を送ることを心がけてください。
また、いくらリハビリのための旅行とはいえ、職場への配慮を忘れてはいけません。
旅行中の様子をSNSにあげたり、ここぞとばかりに海外に長期で行くなど、配慮を欠く行動はトラブルにつながるので十分に注意しましょう。
これまで休職者を多く見てきた私の経験上では、2泊くらいの旅行であれば周囲の理解を得られやすいかなと思います。
Q2:薬が必要な状態では治ったとは言えませんよね?復職する時は薬をやめて戻るべきと思っています。
大切なのは「薬や通院を減らすこと」よりも「再発を防ぎ、安定した勤務を維持すること」です。
そもそも、精神科の薬を服用しながら働いている人はたくさんいますから、「薬を服用している事実」により復職できないなんていうことはまずありえません。
復職後は、休職中の生活と比べて明らかにストレスがかかります。
だから、復職の際に薬が増えることも珍しいことではないのです。
復職後も、焦らず、主治医の指示に従い、通院と服薬を継続しましょう。
Q3:復職した時に、会社の人たちからどんな目で見られるのか、心配で仕方がないです。
安心してください。そう考えるのはあなただけではありません。
みんな復職する時は同じように考え、不安で不安で仕方がないのです。
そして、復職後はほぼ全員が「みんな普通に接してくれました。私の気にしすぎでした」と語ります。
これを聴いても、きっと今のあなたは安心できませんよね?長く休んでいたのですから、それが普通です。
でも、大丈夫です。
きっとあなたも「気にしすぎだった」と思いますよ。
Q4:会社から「実家に帰って休んだ方がいい」と言われています。やはり実家で休むべきですか?
実家の方がのんびり休めるなら、帰省するのは良いと思います。(もちろん主治医に相談の上で決めてください)
ただ、親との関係が悪いなど、何らかの事情で実家では休めないという方もいるはずです。
そんな人は、却って悪化することもあるので無理に実家に帰る必要はありません。
また、復職ギリギリまで実家で過ごす方がいますが、リハビリは生活の拠点を元に戻して行わないと意味がありません。
主治医とよく相談の上、実家で過ごす適切な時期を判断してください。
Q5:復職したのですが、早速飲み会に誘われてしまいました。どうやって断ればいいでしょうか?
断ることが苦手な人は、「主治医から、しばらく飲み会は禁止されている」と言いましょう。(嘘でもいいので言いましょう)
主治医やカウンセラーなど、専門家から禁止されていると伝えればしつこく誘われることはありません。
それでも誘われるなら、人事や産業医などに相談してください。
休職中に、今よりもストレスに強くなるために必要なこと。
「復職してちゃんとやっていくために、今よりももっとストレスに強くならないといけないと思うんです」
「もっと他の人たちみたいに、嫌なことがあっても普通に働けるようになりたいです」
私は、これまでに休職中の方からこんなお話をたくさん聴いてきました。あなたもそうではないですか?
もっとストレスに強くなって、復職して、今まで以上にちゃんと働けるようになりたい。
こんな願いはうつ病で苦しむ方なら誰でも持つものだろうと思います。
そんなあなたが、休職中に「もっとストレスに強くなる」ために絶対にお勧めしたいこと。
それは、カウンセリングを受けることです。
ただ自宅で療養して回復を待つだけではなく、状態に合わせた効果的な過ごし方についてカウンセラーから助言を受けることで、より早期の安全な復職が可能となります。
その過程で、カウンセラーと一緒に休職に至った経緯を振り返り、自分の特徴を把握し、再発予防に向けた取り組みを行っていく。
スポーツジムにトレーナーがいるのと同じイメージで、あなたの復職に向けて、カウンセラーが一緒に伴走します。
個人カウンセリングのお申し込みは以下より受け付けておりますので、ぜひお気軽にご連絡ください。
また、休職中の従業員にカウンセリングを受けさせたい法人・団体様は、以下のページをご確認ください。
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