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うつ病の休職後期(リハビリ期)の過ごし方|安全な職場復帰を実現するための最後の準備

うつ病での休職から復職までの具体的な流れを解説するブログ記事の第3回です。

休職初期(療養期)と休職中期(回復期)については、以下のブログ記事で説明しています。

うつ病で休職することになったあなたにまず伝えたい「休職初期の過ごし方」
うつ病の休職中期(回復期)の過ごし方|キーワードは「焦らず、急がず、少しずつ」

また、休職から復職までのおおまかな流れについては、以下の記事にまとめています。

うつ病での休職中の正しい過ごし方とは | 再発しない安全な復職を実現するためのポイントを徹底解説

今回は、休職後期(リハビリ期)の過ごし方について詳しく説明します。

※ブログ執筆者 AIDERS 代表 山﨑正徳のプロフィールは こちら


状態が安定し、復職に向けた具体的な準備を始める時期

休職中期(回復期)を過ぎると、より体調が安定し、外出をしたり運動をしたりしても、概ね一定のコンディションを維持できるようになります。

気分や体力の波、睡眠が安定し、仕事をしていない現状においては、特別の支障なく生活ができる時期です。

この頃になると、なんとなく休職の生活に飽きを感じてきます。

「つまらないな」「そろそろ何かしたいな」「仕事したいな」
こんな風に、仕事への自然な意欲も出てきます。

また、『あの時は「自分は心が弱い人間だ」と責めていたけど、今振り返ると本当に病気だったんだなと思います』と休職当時の自分を客観的に振り返れるようになるのも大きな特徴です。

ここまでくると、いよいよ復職が見えてきます。
主治医や会社と相談し、復帰に向けて具体的な準備をしていきましょう。

以下、安全な復職を実現するための、休職後期の過ごし方のポイントを書いていきます。


復職に向けたトレーニングをする。

復職の準備で欠かせないのは、通勤訓練などの復職トレーニングです。

休職の生活に慣れた体を、仕事モードに移行していくための訓練です。

言うまでもないことですが、一ヶ月以上仕事を休んだ状態で、いきなり電車に乗って出勤し、週5日仕事をこなすというのはかなり負荷がかかりますよね。

それにより体調が悪化し、再発してしまうことも十分考えられるわけです。

そのようなリスクをできるだけ減らすために、休職中に、仕事をしている状態に近い生活に戻して体力を整えておくこと。
これが復職トレーニングです。

一般的な復職トレーニングの例を紹介します。

  • 図書館に移動し、資格の勉強をしたり、本を読んだりして過ごす。
  • 会社の昼休憩の時間に合わせて休憩し、午後になったらまた図書館で本を読む。人によってはウォーキングをしたり、ジムで運動をしたりして過ごす。
  • 会社が終わる時刻になったら、電車に乗り帰宅する。
  • 夜は決まった時刻に就寝する。
  • 土日は、生活リズムが崩れないように注意して休み、1週間の疲れをとる。

これを大体2週~1ケ月くらい行います。

やってみるとわかるのですが、初めはこれだけでもけっこう疲れます。
週の半ばに休んでしまったり、土日に寝すぎてしまったりする人が多いです。

ただ、概ねうつが回復していれば、2週くらいで体が慣れてきます。
1ケ月くらい続けていれば、問題なくこなせるようになるはずです。

いきなり1日のトレーニングから始める必要はないので、まずは通勤訓練からやってみるなど、無理なく体を慣らしていきましょう。

トレーニングがこなせれば、「週5日、朝起きて電車に乗って会社に行くくらいは問題なくできる状態」で復帰できます。

加えて、再発を心配する会社側も、トレーニングができていれば復職の許可を出しやすくなります。

1日の活動の様子がわかるように生活記録表をつけて、人事や上司、産業医に見てもらう形がお勧めです。

ここまでが一般的な復職トレーニングですが、リモートワークの普及により、ここ数年で勤め先によりトレーニングの内容もだいぶ変わってきた印象があります。

リモートワークの人はそもそも通勤する必要がないわけですから、通勤訓練をトレーニングから省くこともあれば、「ちゃんと回復していることを確認したいから、例えリモートワークでも通勤訓練はちゃんとやってほしい」という方針の会社もあります。

このあたりは、よく主治医や会社と相談し、より安全な復職をするためのトレーニングが行えると良いと思います。

最後に大切なことですが、このトレーニングの目的は「復職するため」ではなく「再発を防ぐため」です。

時々、どうしても主治医や会社に復職を認めてもらいたいが故に、心身ともにボロボロになりながら復職トレーニングをこなす方がいます。

お気持ちはとてもよくわかるのですが、トレーニングで精一杯の状態では、復帰して再休職せずに働き続けられるとは思えません。

ここまでの頑張りを無駄にしないためにも、ここで無理をせず、焦らず、主治医によく相談してトレーニングを行いましょう。


リワークプログラムに参加する。

リワークは復職に向けたプログラムを行う施設で、医療機関や障害者職業センターなどで行われています。

リワークに参加することの主なメリットを挙げてみます。

  • 毎日リワークに通うことで生活リズムや体力を整えることができる。
  • 医師、臨床心理士、精神保健福祉士、作業療法士、看護師などの専門のスタッフに相談できる。
  • 休職しているメンバーと交流し、復職に向けた不安や悩みを共有できる。
  • 様々なプログラムを通して、自分の考え方の癖や性格的な特徴などに気づき、再発予防のためのスキルを学ぶことができる。

再発を防ぐために、しっかりと準備をしたい方はリワークへの参加が最適です。

ただ、プログラムを終えるには大体3ヶ月くらいを要するところが多いため、「休職期間が長引いてしまう」という理由から参加に躊躇する方は少なくありません。お気持ちはよくわかりますよ。

それでも、休職を2回以上繰り返している人には腰を据えて再発予防に取り組んでほしいので、リワーク を特に強くお勧めしたいですね。

また、リワークに参加する際に特に気をつけてもらいたいこととして、私の見解を書きます。

それは、「ただプログラムに参加して活動をこなしていれば、再発予防の取り組みが行える」と思わないでほしいのです。

大切なのは、リワークプログラムでの生活を通して自己理解を深め、行動や考え方を変えていくことです。

例えば

メンバーと交流する中で、自分の気持ちを押し殺して目の前の相手に合わせて行動するあなたの癖が出るかもしれません。

グループワークの場面で、誰もやりたがらない発表や議事録などの役割を必要以上に引き受けてしまうあなたの癖が出るかもしれません。

リワークは、そんな自分自身の人間関係の特徴を点検し、行動を変えてみるトレーニングの場でもあるのです。

だからこそお勧めしたいのは、スタッフとよく話し、スタッフからあなたの人間関係の特徴や改善すべき点を指摘してもらうことです。

中には個別のサポートが少ないリワークもありますから、スタッフから指摘されるのを待つのではなく、自分から声をかけ、助言をもらうようにしましょう。

※参考
日本うつ病リワーク協会
地域障害者職業センター


会社と復職に向けた話し合いをする。

スムーズな復職を実現するために、会社との話し合いは欠かせません。

復職後の具体的な働き方など(主なものを以下に挙げます)について、上司・人事・産業保健スタッフなどとよく話をしておきましょう。

  • (会社に時短勤務の制度があれば)時短勤務の内容。
  • 具体的な業務内容や業務量。誰とどんな仕事を、どれだけのペースで行うのか、など。
  • 産業医面談のスケジュール。
  • 通院の頻度。
  • 体調を崩した時の対応。

他にも、休職中に整理した自分自身の課題があれば共有して、再発を防ぐために協力を仰げればいいと思います。

「私は困った時に抱え込んでしまい、すぐに相談することが苦手なことが課題です。復職後は改善に努めますが、もし可能であれば、私が抱え込んでいないかを注意して見守っていただけるとより助かります」こんなイメージです。

当然のことではありますが、復職に不安はつきもので、どんな人でも復職が決まれば不安になります。
復職前日は不安感が増して寝つきが悪くなるなんて普通のことです。

ただ、その不安をできるだけ軽減するために、復帰後の環境をできるだけ具体的に話し合い、イメージできるようにしておくことが大切です。

わからないことや確認しておきたいことなどがあれば、リハビリの一環と思い、できるだけ事前に確認しておきましょう。


会社との話し合いが思うようにいかない時は、「最後のトレーニング」だと思うように心がける。

この時期に多い「休職者あるある」が、復帰に向けた会社との話し合いや産業医面談などがうまくいかず、強いストレスを感じることです。

例えば

  • 4月復職を目指して十分準備をしてきたのに、人事の手違いで産業医面談を3月中に実施できず、その影響で復職が5月になってしまった。
  • 会社が復職者の再発にかなりナーバスになっていて、復職トレーニングを十分こなしているのに、なかなか復職を認めてくれない。

こんな思わぬ事態に悩まされる人は少なくありません。
不満やイライラは本当にご尤もなことです。

ただし、私からお伝えしたいことはひとつ。

これがあなたの最後のリハビリなのです。

思い通りにいかない時に、あなた自身がどんな気持ちになりやすいのか。
そして、不満やイライラ、悲しみや落ち込みなどの感情をどう処理するのか。

自分が伝えたいことを、きちんと相手に伝えることができるのか。
どんな方法で、どんな言葉で伝えるのか。

休職中の今だからこそできる、最後のトレーニングだと思いましょう。

私が普段カウンセリングなどでお会いしている方には、このような状況で、できることを考えてもらっています。

「これまでは何も言わずに諦める癖がついていたんですが、どうしても4月に戻りたかったので辛いと人事に伝えたら、謝ってくれました。復職の時期はずれちゃいましたけど、今回自分の気持ちを伝えることができたのはとても大きいです。ちゃんと謝ってもらえるだけで気持ちが違うものですね」

実際に復職した方の言葉です。

休職中だからこそできる貴重なトレーニングの機会を有効に活用しましょう。


ここまで、3回に渡り休職中の過ごし方について説明をさせていただきました。

初めの記事でお伝えしたことでもありますが、休職中の方には、復職に向けて一緒に伴走してくれるカウンセラーの存在がとても大切になってくると思います。

今、自分がどんな状態にあり、どんな過ごし方があっているのか。

復職に向けて、そして復職後に再発せずに働き続けるために、どのような取り組みをするべきか。

このような課題を一緒に洗い出し、より意義のある毎日にしていきましょう。

「今回の休職はとても辛かったけど、私にとってとても意味のあるものだった」
「あの休職があったから、今の私がいる」

このように、あなたがこの辛い休職を乗り越えていくことで、休職をあなたの人生の財産に変えませんか?

個人カウンセリングのお申し込みは以下のサイトにて受け付けております。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

なお、メンタルヘルスやコミュニケーション、人間関係についてのブログ記事は以下のホームページでも書いておりますので、ぜひご自分の振り返りにお役立てください!

対人援助職のメンタルヘルスを改善する!バウンダリー(境界線)ラーニング

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公認心理師・精神保健福祉士。精神科・EAP機関・カウンセリングルーム・学校などで、2万件以上の相談を受けてきたカウンセラー。講師としての経験も豊富で、企業や公的機関において15年以上に渡り、メンタルヘルス、ハラスメント、コミュニケーションなどをテーマに講演を行っている。
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